おじゃまします!手づくり市出展者さま Vol.135京都鞄店 小野正人

手づくり市サイトのコンテンツとして掲載を続けてきたおじゃまします出展者さま。今回を持って最終の掲載とさせていただきます。
コーナー最後の取材先に選ばせていただいたのは、第1回目掲載の京都鞄店小野正人さんになります。昨年から新たに京都文化博物館内に店舗を移し、今も「百万遍さんの手づくり市」に参加していただいている出展者さんです。約12年ぶりの取材になります。

Q. おじゃまします第1回に出ていただいた2011年。小野さんにとってはその年はどんな年でしたか?

正人さん「う〜ん。正直だいぶ時間が経ってしまっているので、はっきりとは思い出せないですね。」

Q. 百万遍さんの手づくり市に出展された日が創業日だったそうですが、そこからパリコレに
作品を出展されるようになるにはどれ程の年月がかかりましたか?

正人さん「2007年7月15日の手づくり市が台風で延期になり、翌日の16日に開催されたので、その日が創業日になります。それから5年後でしょうかパリ・コレクションの展示ができるようになったのは。 トラベルバッグという、ステンレスを加工して鞄の骨組みにする彫刻家だった僕にしか作れない鞄があるのですが、世界中のクリエイティブな作品を日々見ている審査員の方がその鞄を見て喜んでくださったのです。彫刻家だったキャリアが回り道ではなかったのだと思い嬉しかったですね。
海外で活動をすることによってコストを意識するようになりました。僕の作った鞄が海外のブティックで販売される時、関税や輸送費、販売店の手数料が上乗せされて、価格が3.5倍になってしまうのですね。卸価格を抑えるために、デザインや工程を根本的に見直すようになりました。」

Q. 取材をさせていただいた時はご結婚されて間もなかったと思いますが、
12年の間に一番変わったことは何ですか?

正人さん「20代は、1人で好き勝手に制作していましたが、30代で結婚して子供が今では2人。がむしゃらに自分のためだけに活動していた時期は終わったと思っています。最近は、ものづくりの時間は、子供の就寝時間になるべく合わせていくようにとか、自分中心で進んでいた考えだったのが、今は子供たちや他の方に少しでも役立つようになれたらいいなと思っています。」

祥子さん「なかなかそんな話を面と向かってできないので、いい話を聞けました。これからも色々あると思うけど、また頑張っていけるなと思っています。」」

Q. 手づくり市も大きな台風の被害で百萬遍知恩寺の修復が長くかかったり、この3年間のコロナ禍
には大きく変化があったのですが、小野さんとしてはどう乗り越えてこられましたか?

正人さん「販売イベントが一切無くなりました。外出ができなくなると鞄は必要なくなるのです。商品としての鞄は日用品ですが、価格帯としては贅沢品になりますので、助成金などもなく。売り上げがストップしたのが2年間続きました。ただ時間があったので、椅子を作ったり陶器を作ったりしていました。そして、次にチャンスが来たときの準備期間と捉え、一昨年文博への移転を決め、昨年オープンしたところです。」

Q. 前回の今出川のお店から今回、京都文化博物館内のお店に変わっておられて驚いたのですが
ここを選ばれのは?

正人さん「京都で生まれ育って、芸術を学ばせてもらって、ものづくりを続けてきているので、それを大事にしたいなと思って。商売するなら東京だと思うのですが、ここ京都府で続けようと決めたのが前提にあります。ある時、この部屋で長年ギャラリーをされていた方が明日出ていくと聞いたので、その日に店舗として入りたいと伝えました。」

Q. しっかりと目標を立てて行動されている小野さんの次の目標を教えてください。

正人さん「計画性はあまりないと思っていますが、言ったものにしか結果が出ないと考えているので、言ったことに合わせて行動を変えていくようにしています。
今日のこと、
1週間後のこと、
1ヶ月後のこと
3ヶ月後のこと、
半年後のこと、
1年後のこと、
5年後のこと、
10年後のこと
30年後のこと
全部が1直線になるように行動しています。もちろん途中で軌道修正はしますが、行動に関しては意味づけをしています。
目標は、100年続けることです。
僕が死んだ後も、
京都の次世代に、ものづくりの伝統がつながるよう、文化伝承の歯車の一部になるのが僕の目標です。」

Q. これから、出展を考えておられる方へのアドバイスは有りますか?

正人さん「スタートしたら、しがみついてでもずっとハガキを出し続けてほしいなと思いますね。(笑)
アドバイスというものではないですが、
20代は、自分の能力を最大限に表現するために作品を作っていました。今までに作った鞄は3万個ほどになります。その中で、自分の強みは軽くて丈夫な実用性のある鞄なので、その良さを活かしながらお客さまの要望に合ったものを作っていこうと思うようになってきました。僕たちの鞄をまず手に取ってもらうためには、『軽い鞄』を探しているお客さまの目に留まるよう、onomasatoというブランドの前に軽い鞄であることが伝わるよう心がけています。」

実店舗を持ちながら、手づくり市に続けて参加してくださっている小野さんは、30年、100年先を見据えながら「ものづくり」の一つとしての鞄を作り続けている。軽さを重視しながらも、機能的であり、且つ佇まいの美しさを考えながら大切に作っている。さまざまな工作機械を活用し、小ロット多品種でありながらも価格を抑えられるよう追求しているところが、頭はクールで使う人に対する温かい気持ちを「モノ」に沢山込めている作家さんであることが、伝わってきました。
「百万遍さんの手づくり市」と実店舗へも足を運んでみてください。

掲載日2023.11.13

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